研究課題
基盤研究(B)
リン脂質は真確生物における細胞膜の腫瘍構成成分であるだけではなく、膜上に局在するシグナル分子としても重要な役割を果たす。それらは細胞内で局所的に起こる様々な現象の制御に関わると考えられており、実際に動物細胞では、PAやPIP2が細胞の局所的な形態変化における制御シグナルであることが知られている。我々は、植物の細胞形態形成のモデルシステムであるシロイヌナズナの根毛を用いて、局所的制御シグナルとしてのリン脂質の役割を調べた。PIP2は伸長過程の根毛や花粉管の先端に局在することなどから、植物細胞の先端成長における正の制御因子であると考えられている。我々はシロイヌナズナのPIP2生成酵素、PIP5K3が根毛形成に関与することを突き止め、その生物学的機能,分子動態などを調べた。PIP5K3遺伝子は幼植物体では根毛細胞特異的に発現する。その遺伝子の突然変異体では根毛の伸長が抑制され、また、過剰発現により根毛の伸長が促進された。YFPとの融合タンパク質PIP5K3-YFPのPIP5K3プロモーターによる発現はpip5k3突然変異体の形質を相補することができた。このタンパク質の細胞内局在性を観察した結果、PIP5K3-YFPは根毛発生の極初期段階から根毛先端の細胞膜およびその周辺の細胞質に局在し、根毛伸長の終止とともに速やかに消失することが判明した。これらのことから、PIP5K3は、根毛先端において根毛伸長を量的に制御する因子であると考えられる。
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