研究課題
基盤研究(B)
植物をはじめ多くの生物は、様々なストレスに曝されると、グリシンベタイン(ベタイン)などの適合溶質を蓄積して蛋白質、核酸の失活を防止することが知られている。本研究では、植物・ラン藻のベタインの合成・輸送・蓄積の分子機構を明らかにすることを目的とした。死海から単離した耐塩性ラン藻がもつグリシンの3段階のメチル化によるベタイン合成経路を植物および淡水性ラン藻に導入すると、ストレス耐性が著しく向上することが明らかになった。また、耐塩性ラン藻のベタイントランスポーターはベタインを輸送するがプロリンを輸送せず、両者を輸送するマングローブのベタイントランスポーターと異なことが明かとなった。耐塩性ラン藻のベタイントランスポーターはアルカリ性のpHで輸送活性が高く、アルカリ性での塩ストレス耐性に重要であることが明らかになった。ベタインの蓄積はナトリウムイオンの蓄積と密接に関係することが知られているのでNa^+/H^+アンチポーター遺伝子についついても検討した。ラン藻のSynNhaP1アンチポーター(CPAI型)をタバコの根の細胞質膜に特異的に発現させたところ、形質転換植物の耐塩性が増加することが明らかになった。また、ラン藻のApNhaP1およびSynNhaP1のC末端が輸送するイオン特異性および親和性に関与するとともに、pH依存性にも関与することが明らかになった。カリウムイオンは細胞内に大量に存在し細胞の活性を阻害しないことから、浸透圧適合溶質としても働くと考えられていたが、今回、K^+が細胞外に多量(過剰)に存在するストレス条件下で、大腸菌のChaAおよびVibrioのNhaP2アンチポーターが濃度勾配にしたがってK^+を細胞内へ排出することを見い出した。
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