研究課題
基盤研究(B)
ミトコンドリアは細胞内でのヘムや鉄-硫黄クラスターなどの鉄補欠分子族の合成の起こる細胞内小器官であり、鉄代謝にとって中心的な役割を果たす。しかしながら、ミトコンドリアからの輸送など、鉄、及び鉄補欠分子族の細胞内動態は全くと言ってよいほど明らかではない。そこで、その分子メカニズムとその鉄代謝制御機構における役割の解明をめざして研究を遂行した。出芽酵母の鉄代謝調節機構の中核をなす転写因子であるAft1は鉄依存的に核外移行することでその活性が制御されている。そこで、Aft1の鉄依存的核外移行機構について解析を進め、Msn5pがAft1pの核外輸送担体であることを示すとともに、Aft1に鉄依存性に二量体を形成することで核外移行すること、Cys291が二量体形成に重要であることを示した。Cys291変異Aft1は核に局在すること、さらに、Cysは鉄ー硫黄クラスター形成の形成に関与するアミノ酸残基であることを鑑みるに、Aft1はCys291を介して鉄をおそらくは鉄ー硫黄クラスターの形で感知し、鉄依存的に二量体形成し、核外移行すると考えられた(In press)。また、トリDT40細胞での遺伝子ノックアウト解析を用いた高等真核細胞における鉄-硫黄クラスター形成遺伝子のホモログの機能解析を進めた。ノックアウトによりミトコンドリア、細胞質のいずれで鉄ー硫黄クラスター代謝を阻害した場合でも、細胞質の鉄ー硫黄クラスター蛋白質であるIRP1に鉄-硫黄クラスターは形成されなかった。しかし、細胞質の鉄ー硫黄クラスター代謝を阻害した場合にのみ、IRP1が鉄存在下ではプロテアソーム依存的に分解されるが、その分解はヘム合成阻害により解消された。以上からIRP1は鉄ー硫黄クラスターを介して鉄を感知して鉄代謝を制御することが知られていたが、鉄ー硫黄クラスターを介してのみならず、ヘムを介して鉄を感知する系が存在することが明らかとなった(投稿準備中).
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