研究課題
基盤研究(B)
本研究は、脳解析のモデル系である黄色ショウジョウバエにおいて異種の情報を統合する機能を持つ連合野に注目し、細胞の網羅的な同定を目指した。3939のGAL4エンハンサートラップ系統をスクリーニングして、多様な神経細胞の一部分のみを可視化し、共焦点蛍光顕微鏡で観察記録した。まず、キノコ体の入出力である「傘部」「葉部」について、従来細かい内部構造が知られていなかったのを詳しく解析した。その結果、傘部については従来知られていなかった新しい入力部位を発見し、topknotと命名した。葉部については、従来知られていたα、α'、β、β'、γの5つの領域を解析し、α、α'を3層3節、β、β'を3層2節、γを1層5節の、計35の領域に区分した。また葉部は縦方向の分岐と横方向の分岐があるが、層の構造は両者で相同であることを発見した。さらに、それぞれの領域と脳の他の部分とを結ぶ回路を調べ、傘部については新たに2種類、葉部については12種類の神経回路を同定した。葉部には、1)縦分岐と横分岐のそれぞれ基部同士を結ぶ回路、と2)縦分岐の先端部と脳の他の領域、横分岐の先端部と脳の他の領域を結ぶ回路とがあった。後者では、縦分岐と横分岐では接続されている脳領域に明確な違いがあり、これらの2つの分岐は異なる入出力信号を受けていること、すなわち機能的に大きな差異があることが示唆された、中心体については、その構造の根幹をなす楕円体や扇状対領域を構成する神経の一部のみを特異的にラベルするGAL4エンハンサートラップ系統をスクリーニングし、特に扇状体領域の特定の層に投射する2群の神経を得た。これらの神経を高い特異性でラベルする系統が得られたのは初めてだったので、中国とドイツの研究グループと共同でその機能を解析した。その結果、これらの神経が図形の輪郭の傾きという特定の視覚パラメーターの記憶に深く関与していることが分かった。
すべて 2006
すべて 雑誌論文 (6件)
Nature 439
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