研究課題
基盤研究(B)
脊椎動物の胚発生における神経化と初期パターン形成の分子メカニズムを明らかにするため、予定中脳後脳境界(MHB)領域に特異的に発現するbHLH型転写抑制因子XHR1の機能解析と発現調節機構の解析を行い、以下の2点を明らかにした。1)機能解析: XHR1の標的遺伝子候補として同定されたbHLH型転写抑制因子ESR1に関して、XHR1-VP16-GRによるタンパク質合成阻害因子下における活性化実験、XHR1とESR1の過剰発現実験、およぴアンチセンスモルフォリーノオリゴによるXHR1の機能阻害実験を行った。その結果、ESR1はXHR1の直接の標的遺伝子であり、XHR1はESR1の発現抑制に必要十分であること、ESR1の過剰発現によってMHB遺伝子であるPax2の発現が抑制されたことから、XHR1によるESR1の発現抑制がMHBの領域化に重要であることが示唆された。さらにXHR1はESR1と異なりNotchでは活性化されず、またニューロン形成に関わるneurogenin、Deltaの発現も直接抑制することから、XHR1はニューロン分化におけるプリパターン遺伝子として働くと考えられる。2)発現調節機構の解析:2倍体のXenopus tropicalisのXHR1遺伝子(XtHR1)の翻訳領域にレポーター遺伝子を挿入し作成した全長約25kbのコンストラクトはXHR1の発現を再現した。そこでその欠失コンストラクトを、DNA顕微注入法あるいは精子核移植法を用いて胚へ導入し発現制御領域の検討を行った。その結果、原腸胚初期の予定MHB領域に発現をもたらす領域(初期エンハンサー・モジュー、EEMと命名)と尾芽胚期のMHB領域に発現をもたらす領域(後期エンハンサー・モジュール、LEMと命名)を見出した。EEMは神経化因子と後方化因子WntとFGFに反応することから、これらのシグナルを統合する制御領域であると考えられる。このEEMの反応性は内在性XHR1の反応性と良い対応を示した。したがってオーガナイザーによる神経誘導作用と後方化因子によるパターン形成がEERを介してXHR1の予定MHB領域での発現を引き起こすことを示唆している。以上より、神経化と初期パターン形成によりXHR1が発現を開始する分子機構、およぴそのプリパターンにより規定された予定MHB領域から脳のオーガナイジングセンターのMHBが形成されるまでの分子カスケードの一端が明らかとなった。
すべて 2005 2004
すべて 雑誌論文 (8件) 図書 (3件)
Dev. Biol. 283
ページ: 253-267
Dev.Biol. 283
Mech.Dev. 122
ページ: 1322-1339
Int.J.Dev.Biol. 49
ページ: 939-951
Dev.Dyn. 230
ページ: 700-707
Mol.Cell.Biol. 24
ページ: 8418-8427
Gene 338
ページ: 93-98