研究課題
基盤研究(B)
大腸菌の複製起点(oriC)領域の染色体分配の様子が解るにつれ、染色体分配の駆動メカニズムの存在が明確になった。oriC領域は、細胞中央から細胞両極へと移動する。このoriCの移動を担うシス配列(migS)を見いだした。さらに、migSと相互作用するタンパク質を分離し、質量分析を基にその遺伝子を明らかにした。これら遺伝子破壊株を調べたところ、2つの遺伝子破壊株で所migS欠失株と同様にoriCの移動が阻害された。その一つは新規遺伝子であり、migPとした。ゲルシフト法からMigPにはDNA結合が認められた。2つ目の遺伝子は、巨大な呼吸鎖複合体I(Complex I)を形成するサブユニットの1つNuoGをコードしていた。14のサブユニットから構成されるComplex Iは膜局在性の蛋白で電子伝達系の第一番目の酵素である。NuoGはその中で細胞質中に露出した触媒ドメインに位置する。これらのことから、MigPやNuoGらと相互作用がしmigSを含む染色体領域が膜に付着することが考えられる。まずComplex Iの膜ドメイン、触媒ドメイン、そしてそれらをつなぐコネクタドメインなど様々なサブユニットを欠失させた株を構築し、migSによるoriCの細胞内局在の変動を調べた。その結果、ΔnuoB,ΔnuoI(以上コネクタドメイン)やΔnuoH(膜ドメイン)ではΔnuoG株同様にComplex Iの機能喪失に伴う表現型が成育や運動性に見られるものの、oriCの移動に特に影響は見られなかった。このことは少なくともNuoGがoriCの移動に必要であり、Complex Iによるエネルギー生産そのものとは無関係であることを示唆している。
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