研究課題
基盤研究(B)
両性花植物の自家不和合性は、自家受精による内婚弱勢を回避し集団内の遺伝的多様性を維持する遺伝的機構であり、受粉後の雌蕊と花粉の間の自他認識反応により自己花粉の受精が抑制される性質である。ヒルガオ科Ipomoea属植物におけるこの自他認識反応は、S遺伝子座に座乗する複対立遺伝子によって制御されている。本研究は、S遺伝子座にコードされている遺伝子を同定し、ヒルガオ科における自家不和合性の分子遺伝学的機構を明らかにすることを目的として3ヶ年にわたって実施された。研究成果の要点は、次の通りである。(1)S遺伝子座に緊密に連鎖する数種類のDNAマーカーを同定し、精密な遺伝地図を構築した。(2)3種のSハプロタイプ(S1,S10,S29)について遺伝地図に基づくポジショナルクローニングによる染色体歩行を行った結果、S遺伝子座をカバーするゲノムクローンをそれぞれ得た。(3)これらのクローンの解析から、S1(308kb)、S10(67kb)およびS29(118kb)のゲノム塩基配列を明らかにした。Sハプロタイプ間の塩基配列比較から、変異が著しい.30〜95kbにわたる多型性領域が見出され、S遺伝子座の物理的範囲が絞り込まれた。(4)ノーザン分析による遺伝子の発現解析ならびにcDNAクローンの解析から、3種の柱頭特異的発現遺伝子(SE1,SE2,SEA)ならび葯・花粉特異的発現遺伝子(AB2)がS遺伝子候補として同定された。(5)柱頭特異的S遺伝子候補について、RNAiコンストラクトを導入した形質転換体を作出し発現解析を行った結果、自家不和合性形質の変化は認められなかった。(6)これら柱頭特異的遺伝子産物は膜貫通型蛋白質であると予測され、他の植物で知られているS遺伝子産物とは相同性が認められないことから、ヒルガオ科では新規の自家不和合性機構が働いていることが示された。
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Sexual Plant Reproduction 20・2(online published)(印刷中)
Sexual Plant Reproduction online published
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