研究概要 |
魚油、大豆リン脂質および大豆油と共役リノール酸(CLA)肝臓の脂肪酸合成系酵素の活性と肝臓および脂肪組織の遺伝子発現に与える相互作用をマウスを用いて調べた。9c,11t-と10t,12c-オクタデカジエン酸を主成分とするCLAを1.0%含む飼料の摂取は脂肪組織重量を大きく低下させ、血清のレプチンとアディポネクチン濃度を減少させ、数多くの脂肪組織遺伝子の発現を低下させた。しかし、CLAは血清のインスリン濃度を4倍に増加させ、肝臓の脂肪酸合成系酵素の活性と遺伝子発現上昇を伴い、肝臓重量増加と脂肪肝を引き起こした。CLA食へ、魚油を1.5〜6%添加すると用量依存性に脂肪酸合成を抑制し、肝臓脂肪レベルを低下させた。CLA食への魚油の補足はまた、脂肪組織の各種遺伝子発現を増加させ、脂肪組織重量を増加させ、血清のレプチンとアディポネクチン濃度を上昇させた。しかし、1.5%の魚油とCLAを含む飼料摂取マウスでは、高インスリン血症は更に悪化したが、魚油の添加量を増加させるとインスリン値は正常な値になった。大豆リン脂質のCLA食への添加も肝臓脂肪酸合成を効果的に抑制し、脂肪肝の緩和に有効であった。しかし、リン脂質は脂肪組織の遺伝子発現を増加させるが脂肪組織重量の増加は引き起こさず、またCLAによって引き起こされる高インスリン血症をむしろ更に悪化させた。魚油や大豆リン脂質と比較して、大豆油はCLAによって引き起こされる肝臓脂肪酸合成や肝臓脂肪蓄積の抑制には有効では無かった。また、大豆油はCLAによって引き起こされる脂肪組織重量低下の緩和や高インスリン血症の改善にも無効であった。t10,c12-CLA投与によって、CLA混合物の肝臓脂肪酸合成、脂質レベル、血清インスリンレベルや脂肪組織遺伝子の発現に与える影響を再現することが出来た。魚油はt10,c12-CLA投与によって引き起こされる代謝異常を有効に緩和することが確認された。9c,11t-CLAは10t,12c-CLAとは対照的に肝臓の脂肪酸合成、脂質レベル、脂肪組織重量および血清インスリン濃度に影響を与えなかった。しかし、魚油と9c,11t-CLAの組み合わせは相乗的に肝臓の脂肪酸合成を抑制し、血清の脂質レベルと肝臓のトリアシルグリセロールのレベル低下に有効であることが見いだされた。以上の結果から、魚油と組み合わせることにより、CLAの抗肥満食品成分としての有効で安全な活用が可能であると思われた。
|