研究課題
基盤研究(B)
1999年台湾・集集地震で発生した2つの大規模崩壊一九?二と草嶺-を対象に、崩壊後の地形変化とそれによる再不安定化について検討した。また、期間内に発生した新潟県中越地震と能登半島地震も対象とした。1.過去150年の崩壊の記録が残っている草嶺について、地震と崩壊の関係を調べた結果、推定最大加速度と崩壊発生の間には明瞭な相関は見られず、地震だけでは崩壊の発生を説明できない。素因の影響が示唆された。2.重力クリープによる座屈褶曲の可能性を、簡単なモデルを作り試算した結果、地層の物性によってはこの現象が起こりうること、座屈褶曲の位置は斜面下部の100m程度の間にあることが導かれた。3.両崩壊地の下部斜面に見られる座屈褶曲とそれによる侵食は、年々進行している。座屈褶曲による地形変化を検出するため、両崩壊地で5年にわたりGPS測量を実施した。草嶺では、中部斜面が年5cm程、下部斜面は年に1cm程の水平移動、および年に1-2cm程の隆起が見られ、徐々に不安定化している状況が把握できた。4.応力開放による表層5m程度までの地盤強度の低下を追跡するため、各崩壊地3本の測線で簡易弾性波探査を実施した。この6年間に、1年当たり400-600m/sの割合で弾性波速度が低下している傾向が認められた。5.新潟県中越地震により発生した地すべりについて、とくに旧地すべり跡(地すべり地形)での再滑動に注目して調査を実施した。GISを用いた解析の結果、地すべり地形内で発生した地すべりの面積率は5.26%、非地すべり地形上では0.16%となり、再滑動型の地すべりが面積的には圧倒的に大きい。この結果は、地震時の地すべりの発生が、過去の履歴に強く支配されており、地すべりの発生履歴が無い場所では地震時に地すべりが発生しにくいことを示している。上載荷重除去後の斜面の再不安定化に結び付く現象と考えてよい。
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