研究課題
基盤研究(B)
本研究の目的は、心材形成の生化学・分子生物学的機構の全貌解明にいたる第一段階として、心材に特異的且つ多量に蓄積する心材抽出成分の生合成に着目して、これに与る遺伝子の機能解明を行うことである。本研究では、まず、数種の新規フェニルプロパノイド心材成分生合成酵素について、cDNAを取得し、その機能解析を行った。すなわち、ノルリグナン(ヒノキレジノール)合成酵素、リグナンOMTおよび新規フラボノイドOMTのcDNAである。これらの遺伝子の機能を、対応する組換え酵素の生化学的解析および遺伝子発現解析に基づき検討した。その結果、リグナンOMTは、リグナン中に複数存在する水酸基の内の一つを位置選択的にメチル化すること、またヒノキレジノール合成酵素は、2つのサブユニットからなり、サブユニットの組成比が、生成物の幾何異性とエナンチオマー組成を決定することを示した。次に、フェニルプロパノイドモノマーの合成にかかわる酵素をコードする遺伝子ファミリーメンバーも多数取得し、その発現解析ならびに組換え酵素が触媒する反応の速度論解析を行った。その結果、ケイヒ酸モノリグノール経路のいくつかの遺伝子の機能が特定された。また、リグナン合成に関わる新たな酵素ピノレジノールレダクターゼと対応する遺伝子を見出し、その生化学的特性について解明した。すなわち、同酵素にはアイソフォームが2種存在し、それぞれ基質のエナンチオマーに関する選択性が異なること、また、両アイソフォームの発現状況の違いにより、生成リグナンのエナンチオマー組成の変動が説明できることが示された。さらに、これらの酵素遺伝子を起点として、生合成調節に与る転写因子を数種単離することができた。よって、これらの成果は、心材形成の分子機構解明に対する基盤の一部を提供した。
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