研究概要 |
1.アマモ群落の生産力推定 大型同化筒を用い,アマモ草体全体の光合成および呼吸による酸素の増減と群落の光環境を測定し,本装置の有効性を検討するとともに,得られたデータから間接的に生産力を推定するモデルを構築することを試みた。また,比較対象として現存量法による実測から生産力を求めた。用いたパラメータは、現場の測定データを勘案し、水深1.5m、吸光係数0.3、葉面反射と葉面透過率を0.4、光合成は実測値を用い、LAI(葉面積指数)を0.5-8まで変化させて計算した。大型同化筒を用いることにより天候に関わらず,現場で光合成および呼吸を測定できた。よって,本装置は現場環境下での光合成および呼吸の測定を行うのに有用であると考えられた。 現存量法で求められた生産力は1.20gm^<-2>day^<-1>であった。一方,光環境および光合成を基礎にした生産力モデルから推定された値は1.53gm^<-2>day^<-1>であり,両者はよく一致した。 2.光合成産物の測定 高速液体クロマトグラフィーを用いて、アマモの光合成産物を測定した。アマモの光合成産物の大部分はスクロースであり、地上部には2-20%、地下部には2-40%と多量に含有されていた。スクロース含有量は明瞭な季節変化を示し、夏季の成熟期に高く、秋季から冬季にかけて低くなった。デンプンはスクロースに比べ少なく、地上部には0.5-4%、地下部では2-10%であった。しかし、種子のみはデンプン含有量が高く、40-50%の高い値を示した。デンプン含有量は、葉部では明瞭な季節変化を示さないものの、地下部では枯死・脱落期の夏に多く、それ以外の季節では低いままであった。 3.種子の発芽に伴うデンプン量の変化 室内実験において、水温、塩分濃度をさまざまに変化させて発芽実験を行い、最適発芽条件を決定すると共に、発芽に伴うデンプン量の変化を測定した。発芽の最適水温は15℃で、25℃以上では発芽数は低かった。発芽後約30日の、第3葉が展開するとデンプンがほぼ消失することから、第3葉の展開後は自律的に生長することができる。
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