研究課題
基盤研究(B)
本研究は、大気CO_2増加が植物-土壌系を変化させるしくみ、とりわけ、CO_2濃度上昇が根の消長に及ぼす影響と、土壌の可溶性有機物、メタン生成・酸化・放出に着目して実施した。結果は以下のとおりである。FACE実験において、200ppmのCO_2濃度上昇により、イネのモミ収量は15%増加した。収量増加率は、N施肥量を標準より増やしても変わらないが、半減させるとほぼ半減した。この収量応答のN依存性について、高CO_2濃度で根の発達が促され、N吸収が促進されることが重要と考えられた。同じくFACE実験の水田で、メッシュバッグ法とミニライゾトロン法によって、根の消長を調べた結果、高CO_2濃度区では、幼穂形成期までは新根発生量が多く出液速度も大きいが、出穂期頃には新根発生量・出液速度ともに差が無くなり、登熟中期から後期にかけては、根の枯死量が高CO_2濃度区で大きかった。CO_2濃度制御チャンバーでの実験では、高CO_2濃度によってメタン放出量が増加した。メタン放出量は水稲品種間で異なったが、CO_2濃度の影響に品種間差は無かった。土壌水中の溶存メタン濃度は、CO_2濃度区間で、大差無かった。土壌のメタン酸化活性への高CO_2濃度の影響は、品種によって異なった。可溶性有機態炭素(DOC)濃度は、高CO_2濃度区で高くなる傾向があった。同じチャンバー実験で、ミニライゾトロンによって土壌中メタンの気泡への蓄積を非破壊で継続的に観測できた。ミニライゾトロン画像中で、気泡が根の近辺に多く存在することから、ライゾデポジションがメタン生成に大きく貢献することが示された。チャンバー実験の結果に、生物地球化学モデルDNDCを適用したところ、高CO_2濃度による稲の生長の変化とメタン生成量の変化を、定性的には概ね良くシミュレートできたが、メタン放出量の品種間差と、メタンのコンダクタンスについて、改良の必要が見出された。
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