研究概要 |
本研究課題への交付期間に得られた研究成果は以下のように要約される。 (1)アレルギー自然発症マウスをカゼインホスホペプチド(CPP)添加飼料で飼育するとアレルギー症状の発現が軽減されることを明らかにした。(2)CPPはIgA産生に必要なインターロイキン(IL)-5およびIL-6の分泌を促進することを見出した。(3)従来市販されているCPPは全身免疫系の促進を行わないが,麹菌のアルカリ性プロテアーゼをウシ全カゼインに作用させることにより得られるCPPは腸管のIgA産生だけではなく,血液IgG産生も促進することを明らかにした。(4)CPPはトールライクレセプター-4(TLR-4)を介して免疫担当細胞に結合することを明らかにした。(5)発酵乳製品からも生乳の場合と同様にCPPを調製出来ることを示すとともに,調製したCPPはIgA産生促進機能を有することを示した。(6)グルコース数が平均16個からなるデキストリンに1分子当たりおよそ4.5個のリン酸が共有結合したリン酸化デキストリン(PD)を調製し,CPPと同様にリンパ球の増殖促進活性やIgA産生促進活性を有することを細胞培養系とマウスへの経口投与試験で明らかにした。(7)PDを飼料重量の0.5%量添加して25日齢の仔豚を8週間飼育すると,増体重および腸管IgAレベルが無添加飼料での飼育の場合よりも有意に高くなることを確認した。(8)グルコース3個あたりおよそ1個のリン酸が結合したPDは液性免疫だけではなく,細胞性免疫も促進することを示した。(9)CPPおよびPD添加飼料で飼育したマウスパイエル板細胞からmRNAを抽出し,それらをDNAマイクロアレイにより網羅的に調べることにより,CPPおよびPD添加飼料での飼育は非常に類似したmRNA変動パターンを示すとともに,分泌型IgAの合成,カルシウムの能動吸収,抗腫瘍作用などが増強することを示唆する結果を得た。
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