研究概要 |
血管内皮細胞の同定の指標として蛍光標識したアセチルLDLの取り込み活性が広く用いられている。FEEL-1はその活性を担うマルチリガンドなスカベンジャー受容体である。FEEL-1,-2はグラム陰性、陽性の細菌や動脈硬化の発症や糖尿病の進展に関与すると考えられている酸化LDLやAGE(後期糖化反応生成物)をもリガンドとすることを報告してきた。FEEL-1の細菌の結合に必要なドメインの推定を行うこと、血管内皮細胞の培養上清に検出される可溶性FEEL-1の細菌結合活性の検討を行うこと、マウス肝臓初代培養細胞を用いてFEELの機能を明らかにすることを目的とした。ヒト臍帯静脈血管内皮細胞cDNAライブラリーよりクローン化した可溶型のFEEL-1の機能についてアデノウィルスベクターを用いた可溶型蛋白質の発現によって検討したところグラム陰性、陽性細菌を結合することが明らかになった。最近、FEEL-1が血管内皮細胞のHSP70の受容体であることを明らかにした。これらの結果はFEEL-1が細胞表面で細菌を結合するだけでなく、可溶型の受容体として細菌を捕捉する可能性を示唆している。肝臓類洞血管内皮細胞(liver sinusoidal endothelial cell, LEC)やKupffer細胞(KC)におけるFEELの細菌の結合活性への寄与を検討した。LECとKCにはFEEL-1,-2共に発現が認められた。FEELに対するmiRNAを発現するファイバーミュータントアデノウィルスを用いたFEEL-1,-2蛋白質のノックダウンによりスカベンジャー受容体活性が減少した。これらの結果はin vivoでFEELが細菌の結合、排除に重要な役割を担っている可能性を示唆している。FEEL-1,-2のノックアウトマウスの作出に成功した。
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