研究課題
基盤研究(B)
我々は、ショウジョウバエ遺伝子transient receptor potential(TRP)とその動物ホモログ遺伝子産物が、様々の細胞刺激により活性化するカチオンチャネルを形成していることを、明らかにしてきた。既に、「細胞死」の制御に関与する、新しいCa^<2+>透過型カチオンチャネルTRPM2を同定し、報告している。TRPM2は過酸化水素(H_2O_2)などの酸化的ストレスによるTRPM2の活性化は細胞内で産生されたNAD^+およびADP-riboseがTRPM2のC末端に存在するNudix motifに作用して引き起こされていると考えられているが、活性制御の詳細、また、血球系細胞におけるTRPM2の生理的役割は明らかにされていない。そこで、本研究では酸化的ストレスによるTRPM2の活性化機構の詳細および生理的役割を明らかにすることを目的とし検討を行った。TRPM2活性化機構解明にあたり様々なストレス応答シグナルに着目し、extracellular signal-regulated kinase(ERK)がTRPM2活性化に重要な役割を果たしていることをつきとめた。また生理的役割についてはTRPM2発現が認められている単球細胞株U937を用いてH_2O_2によるサイトカイン産生に着目したところH_2O_2によるIL-8産生誘導にTRPM2を介したCa^<2+>流入が関与することを明らかにした。また、TRPM2 KOマウスを用いて免疫応答細胞におけるTRPM2の生理的役割についても現在検討を行った。最近、フォスフォリパーゼCの活性化とイノシトール3燐酸産生に強く連関しているTRPC1-7の活性制御にも、活性酸素種による酸化が重要であることを見い出した。TRPC5は一酸化窒素(NO)や活性酸素を感知、活性化開口し、Ca^<2+>を流入させることを見出した。また、TRPC5は、血管内皮細胞の形質膜陥入構造カベオラにおいて、内皮型の一酸化窒素産生酵素eNOSと機能的複合体を形成し、内皮細胞におけるNO産生のpositive feedback loopを制御することがわかった。このようなTRPチャネルと活性酸素種との機能的協関は、Ca^<2+>シグナル及び膜電位変化(カチオン流入出)が、酸化ストレスに対する生体応答制御の重要な基盤であることを示唆する。さらには、TRP遺伝子ファミリーによってコードされているカチオンチャネル群は、細胞の恒常性維持、増殖や死/生存に深く関与していることが示された。
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