研究概要 |
【はじめに】 病院経営において、間接コストの按分方法はまだ確立されていない。他の業種で用いられるABC法は各診療科の間接コスト按分は正確になる反面、按分指標が多いため、データ採集と計算が複雑になることが問題である。この研究では、このABC法でのコスト値の正確性を保ちながら、按分指標の数を客観的に縮約するための新しいコスト計算法CDR(cost driver reduction method)法を開発した。CDR法による間接コスト計算を大学病院での実データを用いて行い、妥当性、実用性の検証を行った。 【方法】 間接コストを算出したいm個の対象(診療科、個々の診療行為など)をOj(j=1,…,m)、それらに関連したn個の業務行為をAi(i=1,…,n)と表わす。ABC法では、それぞれの業務行為にコスト按分指標Di(以下、指標と呼ぶ)を設定し、Diの総量とOjの業務に要するDiの内訳量dijを用いて間接コストをきめ細かく按分する。CDR法の正確性および実用性を検証するために、当院の検査部の生化学検査、血液検査、免疫検査の間接コストをABC法とCDR法に基づき計算し評価した。 【結果】 大学病院で生化学検査、血液検査と免疫検査にかかる年間間接コストをABC法で計算すると、それぞれ43,723,227円、3,069,505円と1,805,632円であった。ABC法に使われる7つの指標は、CDR法によって4つに縮約された。縮約された指標を使ったCDR法によるコスト計算の結果、生化学検査、血液検査、免疫検査のそれぞれは、43,772,560円、2,988,570円、1,837,234円であった。CDR法とABC法の結果との最大計算誤差は2.7%未満であった。最初の1回目はABC法と同じデータを収集しCDR法で指標の縮約を行うと、二度目以降のコスト計算では、指標の数の少ない計算が可能となる。
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