研究概要 |
救急隊が搬送した全外傷症例(14,148例)を対象とした広島圏域メディカルコントロール協議会(面積2,650.19km^2,サービス対象人口1,328,805人)における1年間(2006年4月〜2007年3月)の地域規模調査に引き続く転帰調査を完成し,外傷症例の現場での重症度と実際の転帰(受傷後14日後まで)との関係に関する興味深い知見を得た. 救急隊員が外傷現場で重症であると判断する目安となるロードアンドゴー(以下「L&G」)症列は995例(7.0%)であった.L&Gが初期評価にて(+)(A群)が417例(3.0%),初期評価(-)で全身観察にて(+)(B群)が217例(1.5%),受傷機転のみで(+)(C群)が361例(2.6%),L&G適応なし(D群)が13,153例(93.0%)であった.14日以内死亡例は108例(現着時CPA47例を含む)であり,97例(90%)は初期評価からL&Gと判定された症例であった.14日後に死亡または入院継続中であった重症例は,A群57.1%(236/413),B群44,4%(96/216),C群26.6%(95/357),D群19.7%(2,314/11,739)の順に多かった. L&G適応項目として,初期評価,全身観察の順に実際に重症の転帰をとる割合が高いことが示された.この結果を病院前外傷初療シミュレーション教育であるJPTEC (Japan Prehospital Trauma Evaluation & Care)に活用することが,防ぎえる外傷死を防ぐ上で有用となる可能性が示唆された.
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