研究課題
基盤研究(B)
自記式調査票にて口腔状態を把握でき、歯科医師会を通じた追跡調査が可能な歯科医師を対象としたコホート研究を実施している。今回はベースライン調査データを用いて、歯牙喪失の関連要因および歯牙喪失と栄養素摂取状況との関連を検討するとともに、追跡調査データを用い、歯牙喪失と死亡リスク、脳卒中および虚血性心疾患罹患リスクとの関連の中間解析を実施した。分析対象は21,272名(平均年齢±標準偏差52.3±12.3歳、女性8.0%)である。コホート参加者は、一般住民よりも頻回に歯磨きをし、喪失歯数が少なく、歯周病が少なく、GOHAIスコアで示される口腔関連QOLも高いなど、より良好な口腔の健康状態を示した。5本以上の歯牙喪失(17.5%)と有意に関連(*は負の関連)した要因は年齢の他、女性、喫煙、糖尿病の病歴、歯間清掃用具の使用*、歯石除去頻度*、収縮期血圧、激しい運動*であった。現在歯数群別の推定栄養素摂取量幾何平均値は、現在歯数が多い群ほど、炭水化物を除く栄養素で多かった。歯牙喪失と死亡リスクとの関連の解析では、喪失歯数が5本以上の群で5本未満群よりも有意に高い、約1.3-1.6の性年齢調整死亡率比が認められた。交絡要因を調整すると死亡率比は小さくなったが、なお喪失歯数が多いほど死亡率比が高い傾向がみられた。脳血管疾患についても、性、年齢のみを考慮した場合、死亡リスクの場合と同様に喪失歯数が多いほど罹患リスクが高くなる関連が認められた。ただし他の関連要因も考慮するとこの関連はやや弱まった。さらに追跡期間を延長して検討することが必要であるが、これまでの研究では全身の健康が口腔の健康に及ぼす影響、また逆に口腔の健康が全身の健康に及ぼす影響が示唆された。
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日本歯科医師会雑誌 58
ページ: 865-873
Journal of Japan Dental Association 58
日本歯科医師会雑誌 58・9