研究概要 |
自己免疫性膵炎は膵管の不整狭細像、膵腫大、閉塞性黄疸、血清IgG高値、リンパ球浸潤を伴う著明な線維化、ステロイドに対する良好な反応性によって特徴づけられる特異な慢性膵炎であり、その病因として自己免疫の関与が考えられる。われわれは本疾患患者で、血清IgG4値が高率(90%)かつ特異的に上昇し、HLA DRB1*0405-DQB1*0401 haplotypeと強い相関を認めることを報告した。しかし、本症の病因、発症機序は未だ不明である。本研究では(1)Mannose binding lectin(MBL)経路を含む補体活性化経路の関与の検討と、(2)自己免疫性膵炎、健常人を対象として、全染色体をほぼ10cMでカバーするマイクロサテライトマーカーを用いて相関解析を行った。その結果(1)MBL経路は本疾患の病態には関与しておらず、C3,C4の低下をきたす古典的経路による補体活性化の関与が考えられた。(2)相関解析で患者群に強い相関(P<0.01、Pc<0.05)を示したマーカーは、18種類で感受性が12、抵抗性アリルが6であり、これらは、1,4,5,6,9,10,12,13,15,18,X染色体上に局在していた。近傍に作製したマイクロサテライトでも同様に有意な相関が確認された。強い相関を示したマイクロサテライト近傍に存在する遺伝子をNCBI Map Viewerで検索したところ、KCNA2(D1S2726)、CACNB2(D10S548)、ADRBK2(D22S315)などの遺伝子が感受性候補遺伝子として挙げられた。以上より本症の病態には古典的経路による補体活性化が考えられた。ゲノムワイドレベルでの相関解析から各染色体上に強い相関を示すマーカーが確認され、そのマーカー近傍に本疾患発症と関連すると思われる候補遺伝子が幾つか検索された。
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