研究課題
基盤研究(B)
代謝症候群の基盤病態としての脂肪組織機能異常症に焦点を当て、細胞内グルココルチコイド活性化酵素、11β-HSD1の脂肪細胞やマクロファージにおける活性調節メカニズムを中心に検討した。即ち、(1)ヒト型の細胞内グルココルチコイド活性化酵素、11β-HSD1を強力な脂肪細胞特異的プロモーターの支配下に過剰発現させる新規の遺伝子操トランスジェニックマウスを確立した。(2)培養脂肪細胞において種々の炎症性サイトカインが11β-HSD1遺伝子発現を著明に誘導すること、PPARγアゴニストが11β-HSD1遺伝子発現を著明に抑制すること、11β-HSD1活性化がアデイポネクチンの分泌を著明に抑制することが明らかとなり、11β-HSD1阻害候補低分子化合物を作用させるとこのような脂肪細胞機能異常が是正されることが実証された。(3)ヒト皮下脂肪組織バイオプシーサンプルを用いた臨床研究において肥満者の11β-HSD1遺伝子発現が著明に亢進していることを明らかにした。(4)肥満の脂肪組織は低酸素や異栄養、炎症、酸化ストレス、小胞体ストレス、脂肪毒性など種々の代謝ストレスに暴露されていることが注目されていることを踏まえ、脂肪細胞におけるセラミドやAMPKシグナルの活性化やLPSによるマクロファージ活性化が11β-HSD1の酵素活性や遺伝子発現を著明に亢進させ、細胞機能異常や向炎症的形質を獲得することを新規に明らかにした。また、ChIPアッセイ等により細胞ストレスによって誘導される11β-HSD1の制御に転写因子、C/EBPβが関与することを明らかにした。さらに、低分子11β-HSD1阻害化合物を用いた11β-HSD1の薬理学的阻害がTNF-α、IL-1β,MCP-1などの炎症性サイトカイン、ケモカインの発現と分泌を有意に抑制することが明らかとなった。
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