研究概要 |
成長ホルモン(GH)分泌は年齢とともに低下する。このGH分泌低下に伴う体組成の変化(体脂肪,特に内蔵脂肪の増加,筋肉や骨量の減少)を引き金として連鎖的に発症する疾病のカスケード(高脂血症,耐糖能低下,動脈硬化,高血圧,心血管障害,精神神経障害)はまさに生活習慣病の重要なモデルとなる。本研究の目的は、GHの標的分子の網羅的探索および解析によるGHの生理作用特に抗生活習慣病作用の理解と臨床応用である。これまでGH標的遺伝子の包括的、網羅的解析としてディファレンシャルディスプレー、マイクロアレイを用いて、培養脂肪細胞、肝細胞、筋細胞、血管平滑筋細胞をGHで刺激した際に変動する遺伝子を同定した。また生体においてGH欠損ラットであるSDRを用いて、心臓、肝臓、脂肪組織、骨、筋肉、脳においてコントロールと比較して発現量が変化している遺伝子を同定し解析を進めた。その結果、血管平滑筋細胞においてミトコンドリア機能調節に重要な転写因子mtTFA、心臓において心筋機能調節に重要なcofilin, guanilate cyclase, tymosine bete 4(BBRC 2006)、そして肝臓においては脂質代謝に重要な複数の遺伝子が変動しており、大変興味深いことに成人GH欠損症で高頻度に認められるNASHと同様の変動を示していたことからNASH発症の病態を説明できる可能性が考えられた(投稿準備中)。さらに肝細胞でGHの標的遺伝子として同定した新規ケモカインGI-1は、生体内で肝のみならず脂肪でも発現しており、高脂肪食、インスリンによって発現が亢進し、脂肪細胞に対してインスリン依存性糖取り込みを促進させることが明らかになり、高脂肪食による肥満の進展に関与している可能性が明らかとなった(投稿中)。
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