研究課題
基盤研究(B)
我々は全ゲノムのSNPスクリーニングにより関節リウマチ(RA)の疾患関連遺伝子として、第1染色体にpeptidil arginin deininase(PAD)4遺伝子を同定した。PADはペプチド中のアルギニンをシトルリンに変換する酵素であり、翻訳後の蛋白修飾の一つである。一方、ここ数年の間にRAにおける最も特異性の高い抗体として抗シトルリン抗体が注目されている。従来のリウマトイド因子よりも感受性が高く、特異度も95%以上にのぼる。PAD4はこのPAD遺伝子群の中の一つであり、好中球を中心に免疫担当細胞に発現している。そこで本研究では、特に抗シトルリン抗体の産生機序と抗シトルリン抗体が関節炎と関係するかを中心に、PAD4遺伝子とRAの関係を解析することを目的とした。ヒトRA滑膜由来の蛋白発現ライブラリーを作成しこれをメンブレンに展開し、リコンビナントPAD蛋白によりシトルリン化したものをRA患者血清にてスクリーニングした。この結果、eukaryotic translation initiation factor 4G1やI型コラーゲンなど複数の陽性クローンを得ることが出来、これらを用いてRA患者の自己抗体価を測定する系が樹立できた。現在までの知見を総合すると、RA患者は複数のシトルリン化自己抗原と高い特異性で反応することが判明している。その反応の多様性と特異性を規定する要因の追求が今後必要であることが示された。PAD2とPAD4酵素の活性の相量も明らかにした。シトルリン化されたアンチトロンビンは抗トロンビン活性が低下し、トロンビンの炎症惹起性を亢進させる可能性も示した。さらにこのようにして同定した蛋白をシトルリン化し、マウスに免疫することで関節炎との関係を検索中である。
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