研究概要 |
我々は関節リウマチ(RA)特異的自己抗体の対応抗原の1つがカルシウム依存性システインプロテアーゼ(カルパイン)の特異的内在性阻害因子であるカルパスタチン(CS)であることを報告し,抗CS抗体陽性RA血清中のIgG分画がCS機能を抑制してカルパイン活性を上昇させることを確認した.カルパインは炎症に関与する様々な因子の活性化を司り,RAの関節破壊に関与する中性プロテアーゼの一種と考えられている.本研究はRAの新しい治療戦略をめざして,1)カルパイン阻害薬によるマウスモデル関節炎の制御,2)カルパイン遺伝子導入によるT細胞および線維芽細胞の活性化に及ぼす影響を検討した. 1.カルパイン阻害薬によるマウスモデル関節炎の制御 モノクローナル抗II型コラーゲン抗体で誘発したBALB/cマウスの関節炎は,カルパイン阻害薬E-64-dの腹腔内投与によって有意に抑制された.定量的RT-PCR実験では,E-64-d投与群で組織中のIL-6およびIL-1 mRNA量が有意に低下していた.In vivo実験と同様,培養滑膜細胞にE-64-dを添加すると,IL-6およびIL-1産生が有意かつ濃度依存性に阻害された. 2.カルパスタチン遺伝子導入によるT細胞および線維芽細胞の活性化に及ぼす影響 Th1およびTh2細胞におけるCSの発現を免疫ブロット法で解析すると,CSの発現はTh1細胞でTh2細胞よりも減少しており,特に活性化Th1細胞での減少が著しかった.またヒトCS cDNAを組み込んだレトロウイルスベクターをBalb/cマウス脾細胞より分離したCD4+T細胞および3T3線維芽細胞にトランスフェクトさせたところ,INF-γおよびIL-6産生の抑制が確認された. RA患者ではCSは滑膜細胞のIL-6産生を抑制するのみならず,TH1/Th2分化に影響を及ぼすことで炎症を抑制する可能性が示唆される.
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