研究概要 |
A.樹状細胞(DC)とマクロファージ(mφ)の融合細胞の作成 A/Jマウス皮膚由来のDC株XS106とA/Jマウス由来腹腔mφをPolyethylene glycol(PEG)法にて融合させた。我々はすでに、HAT感受性、ネオマイシン耐性のXS106由来の細胞クローン(V2)を樹立している(Matsue H,et al.,Blood 98:3465,2001)。実は、V2はFasLを導入したときのコントロールの細胞で、in vitro及びin vivoで強力な抗原提示能を示す細胞であり(Matsue H.,Nature Med 5:930,1999)、この実験に適したDCの特性を有すると思われた。DC-mφ Hybridsの選択には我々が開発したdouble selection法を用いた。 B.DC-mφ Hybridsのin vitroの解析:DC,mφ,DC-mφ Hybridsのphenotypeを解析したが、V2がmφ由来のphenotype:F4/80,CD68を発現しており、DC-mφ Hybridsがmφ由来かを示すことができなかった。 C.DC HybridsのHeterogeneity : DCと腫瘍細胞を細胞融合し、ハイブリド細胞のクローンを樹立した。56クローンのうち51クローン(91%)が腫瘍の形質を有していたが、ただ1つのクローンのみがDCとしての形質、すなわち、I-A,CD86陽性、抗原提示能を示した。そのクローンは、腫瘍抗原特異的CTLを誘導し、腫瘍細胞に対するワクチン効果があることを示した(Matsue H et al.,Cancer Biology & Therapy 3:1145-1151,2004)。このことは多くのハイブリドはDCの形質を細胞融合後に失われることを示した。すなわち、DC-mφ Hybridsにおいても、両細胞の生物学的機能の持つHybridsを注意深くスクリーニングしなければならないことを示している。 D.樹状細胞間のGap junction(Gj)の存在の証明とDCの活性化とT細胞への抗原提示能への関与 DCとの細胞融合は高細胞密度下で施行されるが、この条件化でDCの活性化が起こっていた。我々はDCの活性化のメカニズムとして、DC間のGjが重要な役割を演じていることを示した(Matsue H, et al.,J.Immunol. 176:181-190、2006)。生理的条件化または抗腫瘍免疫惹起のときにおいてもこのGjによるDC間の情報伝達が重要であると考えられる。 現段階では、まだ機能的DC-mφ Hybridsは確立されていないが、DCと他の細胞との融合方法の方法論は確立したので、今後種々の組み合わせの2種類の免疫担当細胞のハイブリド細胞で様々な免疫応答を制御する方法論となると思われる。またこのプロジェクトの副産物として、DCの活性化にGjが重要な役割を果たしていることを発見したので、その制御による免疫応答(抗腫瘍免疫を含む)の制御の研究も進めたい。
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