研究課題
基盤研究(B)
テトラスパニンの中で、MRP-1/CD9とKAI1/CD82の両者は固形癌の癌転移抑制遺伝子としての性格を有する。これまで我々は、MRP-1/CD9、KAI1/CD82とインテグリンとの複合構成体は、悪性度が進むほど崩壊消失していくことを発表してきた。一方、PETA-3/CDI51はこれら2者と異なり、癌の進展と共に細胞膜に出現し、インテグリンファミリー等と強固な複合体を構成していき、転移能を獲得し、転移促進遺伝子としての性格を持つことを発見した。また、これまでに我々は、このMRP-1/CD9、KAI1/CD82のトランスフェクションにより増殖抑制がかかる癌細胞株が存在するのを見つけだした。これらの株の場合、in vivoの治療実験でも同一の現象がおこり、何らかの増殖機能を持つ下位遺伝子が存在する可能性が考えられた。そこで、DNAマイクロアレイを用いて、MRP-1/CD9やKAI1/CD82の欠損している母細胞と、これらをtransfectionした恒常発現株の遺伝子を較べ、これらを比較することにより下位遺伝子の発現、及び、それへのシグナル伝達機構を調べて行き、MRP-1/CD9、KAI1/CD82の両者が遺伝子段階でVEGF-Aの発現を制御することを発見した。これまで、一部の癌細胞で転移抑制遺伝子のトランスフェクションでありながら、増殖も抑制されるという矛盾が観察されていた。NRP-1/CD9、KAI1/CD82によるVEGF-Aの発現制御は増殖抑制作用の一部の問題を解明したわけである。また、Wntネットワークに対する機能も明らかになり、少なくともWnt1の抑制に働くことが明瞭になった。また、MRP-1/CD9、インテグリン・3複合構成体に対する抗体も作製できており、この抗体を使用して、より詳細なシグナル伝達機構が解明できるものと考えている。
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