配分額 *注記 |
11,600千円 (直接経費: 11,600千円)
2006年度: 2,200千円 (直接経費: 2,200千円)
2005年度: 2,500千円 (直接経費: 2,500千円)
2004年度: 6,900千円 (直接経費: 6,900千円)
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研究概要 |
先進諸国における高齢者の失明原因の首位は加齢黄斑変性(AMD)である。特に視力障害の著しい滲出型AMDの病態は,黄斑部網膜に主じる脈絡膜由来の血管新生である。本症における脈絡膜血管新生(CNV)の分子機構を解明し,分子メカニズムに基づいた治療法の確立が必要であると考えられるが,CNVの分子機構は完全には解明されていない。 AMD発症の前駆病変が,網膜色素上皮(RPE)下の細胞外沈着物であるdrusenである。近年drusenの成分分析により,drusen内にAlzheimer病における脳内の老人斑の主要な構成成分であるamyloidβ(Aβ)が含まれていることが判明した。そこでAβに着目し,drusen内のAβがRPEに作用して病的状態に至らせることが特に早期AMD発症の原因ではないかと考えた。そこでまず,ヒト培養RPEならびにマウス網膜におけるAβ関連因子の発現を調べたところ,RPEはAβの前駆蛋白であるAPP,分解酵素neprilysin,切り出し酵素secretaseのすべてを恒常的に発現しており,生理的状態で網膜下でAβの産生,分解を制御していた。つぎにRPEが老化し病的状態に陥ってAβを制御するメカニズムが崩れ,Aβが過剰にdrusen内に蓄積した場合にRPEにどのように作用するか調べた。培養ヒトRPE細胞にAβを負荷すると血管新生促進因子であるVEGFの発現は上昇し,逆に血管新生抑制因子であるPEDFの発現は低下した。そしてAβ負荷時のRPE培養上清を血管内皮細胞に添加すると血管腔形成を促進した。最後に,Aβの分解酵素であるneprilysinを遺伝的に欠損したノックアウトマウスにおいて,生後28ヶ月の網膜を光顕的,電顕的に調べると,neprilysinノックアウトマウスの網膜ではwild typeとは異なり,RPEに空泡形成を伴う変性,機能不全による視細胞外節の蓄積に加えヒトのdrusenに類似したbasal depositsの形成がみられた。以上の結果はneprilysinノックアウトマウスがヒト早期AMDの有用な動物モデルであることを示すだけでなく,Alzheimer病だけでなく眼の疾患であるAMDにおいても発症の原因物質としてAβがcriticalであることをはじめて明らかにしたものである。
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