研究概要 |
アンチトロンビンIIIは播種性血管内凝固症候群ばかりでなく重症敗血症に対する有効性が多くの臨床研究で明らかにされている.このことはアンチトロンビンIIIが単に抗凝固作用を有するばかりで無く,抗炎症作用を有することを示唆している.この研究では抗炎症作用を担うアンチトロンビンIIIに対する受容体を探索すること目的とした.そしてアンチトロンビンIIIに対する受容体として従来はグリコサミノグリカンが想定されていた.しかし好中球を用いた研究によりヘパラナーゼで好中球表面のヘパリン硫酸を除去しても,アンチトロンビンIIIが好中球と結合することが明らかになった.このことはアンチトロンビンIIIに対する非グリコサミノグリカン受容体が存在することを示唆する.そこでアンチトロンビンIIIに対する非グリコサミノグリカン受容体の探索を開始した.あらかじめ腫瘍細胞HT1080の細胞膜表面に存在するヘパリン硫酸を塩素酸ソーダやヘパラナーゼで除去した後に,アンチトロンビンIIIに結合する蛋白の種類を,質量分析器を用いて探索した.研究を進めると,アンチトロンビンIIIに対する新しい受容体は当初非グリコサミノグリカン受容体と推察していた.しかし実際には,アンチトロンビンIIIがグリコサミノグリカンの1種であるシンデカン-4のコア蛋白に直接結合する形式の全く新しいタイプの受容体として働いていることが明らかになった.
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