研究概要 |
高組織侵襲性A群レンサ球菌(group A streptococci : GAS)の血清型はM3株の分離比率が高いとの報告があり,同血清型菌において発現しているフィブロネクチン(Fn)結合タンパクFbaBが侵入素として重要であることを明らかにしてきた.一方,抗貪食能を有するM3タンパクは心筋などの組織とアミノ酸レベルで相同性を示すことから,ワクチンとしての応用は慎重になっている.そこで,FbaBタンパクの免疫原性を中心に解析を進めた.FbaBをN末端側から,Protein F1と相同性を示すドメイン(D)1,機能未知のD2,Protein F2と相同性を有するD3,F1およびF2のFn結合領域と相同性を示すD4に区分した.各領域の組織侵入に及ぼす影響を検索するため,それぞれの領域の組換え体(rFbaB)を作製した.FbaBのアミノ酸配列を詳細に検索したところ,D4の一部にヒトコラーゲンと類似性を示す領域が存在することが明らかとなった.各抗FbaB血清を用いたウェスタンブロット法で検索したところ,抗D2血清はケラチンに,抗D4血清はI, II, III, IV, V型コラーゲンに反応性を示し,宿主組織に対して為害性を有する可能性が考えられた.一方,抗D1,D3血清は供試した宿主成分と交叉反応性を示さなかった.以上より,GAS感染症において,FbaBのD3およびD1は感染防御抗原として応用できる可能性が示唆された.
|