研究課題/領域番号 |
16390538
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
研究分野 |
病態科学系歯学・歯科放射線学
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研究機関 | 高知大学 |
研究代表者 |
山本 哲也 高知大学, 医学部, 教授 (00200824)
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研究分担者 |
笹部 衣里 高知大学, 医学部附属病院, 助手 (40363288)
植田 栄作 高知大学, 医学部附属病院, 講師 (10203431)
鎌谷 宇明 高知大学, 医学部附属病院, 助手 (00315003)
立石 善久 高知大学, 医学部, 助手 (20372732)
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研究期間 (年度) |
2004 – 2005
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研究課題ステータス |
完了 (2005年度)
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配分額 *注記 |
14,100千円 (直接経費: 14,100千円)
2005年度: 6,300千円 (直接経費: 6,300千円)
2004年度: 7,800千円 (直接経費: 7,800千円)
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キーワード | 低酸素誘導因子 / アポトーシス / 扁平上皮癌細胞 / Akt / PI3キナーゼ / Bcl-2ファミリー蛋白質 / 放射線 / 抗癌剤 / Bco-2ファミリー蛋白質 |
研究概要 |
株化口腔扁平上皮癌(OSC)細胞を用いて、低酸素、さらには、抗癌剤および放射線によるアポトーシス誘導における低酸素誘導因子(HIF-α)の関わりについて検討し、以下の結果を得た。(1)OSC-4を1%O_2の低酸素で24時間処理すると、HIF-1αの発現が誘導される一方でアポトーシスが誘導されたが、HIF-1αを強発現させたOSC-4では低酸素によるアポトーシス誘導がコントロールに比べ強く抑制された。コントロール細胞では、低酸素処理によりBcl-2およびBcl-X_Lの発現低下、BaxおよびBakの発現増強が誘導され、ミトコンドリアからのチトクロームCの放出が認められたが、HIF-1αを強発現させたOSC-4ではBcl-2およびBcl-XLの発現が亢進し、逆に、BaxおよびBakの発現は低下するとともに、チトクロームCの放出も抑制された。(2)HIF-1αを強発現させたOSC-4ではPI3キナーゼ、pAktおよびpERK発現の亢進、Badのリン酸化、さらには、Badと14-3-3との複合体形成の促進が認められる一方で、BadとBcl-2との複合体およびBadとBcl-X_Lとの複合体形成の減弱が認められた。(3)抗癌剤や放射線に対する感受性は、HIF-1αの発現が強いOSC-5および-6では弱く、逆に、HIF-1αの発現が弱いOSC-2および-4では強く、HIF-1αの発現程度とこれらに対する感受性との間には負の相関が認められた。OSC-5にHIF-1αのsiRNAを導入すると、抗癌剤や放射線に対する感受性が増強し、より強くアポトーシスが誘導され、逆に、OSC-2にHIF-1αのcDNAを導入すると、抗癌剤や放射線に対する感受性が減弱した。(4)OSC-5におけるHIF-1aの標的遺伝子であるMDR1の転写活性およびその産物であるP糖蛋白質の発現は、OSC-2のものより高く、抗癌剤細胞内濃度は低値であった。さらに、OSC-5における抗酸化作用を有するHIF-1aの標的遺伝子産物であるHeme oxygenase-1およびCeruloplasminの発現はOSC-2のものより高く、γ線処理後の細胞内活性酸素レベルは低下していた。以上より、HIF-1αはPI3キナーゼを介してAktを活性化し、Bcl-2ファミリー蛋白質の発現、リン酸化およびComplex形成を制御することにより、アポトーシスを抑制し、細胞を生存へと導くことが示唆された。さらには、HIF-1αは癌細胞の抗癌剤や放射線に対する感受性を減弱させることより、HIF-1αの発現抑制は癌治療の新しい戦略となりうると考えられた。
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