研究課題
基盤研究(B)
本研究では、顎関節を取り巻く力学的環境要因が顎関節の主要な細胞外マトリックスの発現にどのような影響を及ぼすのかについて、タンパク質および遺伝子レベルで分子生物学的手法を用いて解明することを目的としていた。本研究では、Western blotting、免疫染色法およびRapid Real-Time PCR法を用いて、プロテオグリカンの遺伝子発現について成長期のラット顎関節円板の各種プロテオグリカンの発現および局在の変化を検討した。得られた結果は以下の通りである。1.定量性の高いリアルタイムPCRから、バイグリカンの発現は成長に伴い減少傾向を示したが、デコリンは増加を示した。2.バーシカンisoformにおいて、VO,V1およびV3は成長に伴い減少し、V2は8週齢にピークを示した。3.ウェスタン・プロッティングでは、バイグリカンの発現は成長に伴い減少を示したが、デコリンは増加を示した。また、バーシカンの発現は生後8週まで増加したが、その後成長に伴い減少した。4.免疫染色から、バイグリカンは円板全体に比較的弱い分布が認められたが、デコリンおよびバーシカン抗体に対する反応は、バイグリカンと異なり顕著な領域差を示した。以上の結果から、顎関節の生力学的環境変化が細胞外基質の発現に影響を及ぼすことが明らかになった。今後は、以上の結果を踏まえて、軟性飼料でラットを飼育することによる顎関節領域での力学的環境要因の変化が、顎関節症の発現にどのような影響を及ぼしているのかについて検討していく予定である。
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