研究概要 |
せん妄の発症率と,せん妄の発症予防または早期発見・対処に役立つ関連因子(患者因子・ケア関連因子)を明らかにすることを目的として,病院での実態調査を行った。 1.国内外の先進的モデル施設の調査から,標準化スケールや指標の活用によるケアの質監視,ケア人員の充実と継続教育,精神看護領域の患者対応法の活用,抑制使用に関する厳密な手順の遵守,多職種の有機的連携などの組織文化の定着が特色として挙げられた。 2.看護系団体の研修参加看護師194名の調査から,標準化ツールの使用,ケアガイドラインの設置,カンファレンスの定期開催,職員の職務範囲の明確化,組織内の学習機会確保などケアシステムが整備されているほど,体内体外環境の調整,リスクアセスメント,睡眠確保,安全確保などのケアが実施され,看護師の困難感が軽減していた。 3.協力の得られた特定機能病院の外科系病棟で,せん妄ケアの事例研究会の定期開催と標準化スケールの訓練および導入を行った。入院患者109名のデータから,術後の急性混乱状態の発症率は25%,そのうち過活動型のせん妄発症率は5%であった。高齢,術前認知機能障害,術後の状態変化,新たな治療の開始,ライン類の自己抜去などが関連因子であった。 4.3.の病院の看護師のアセスメントとケアを質的に抽出した結果,看護師は患者の身体生理学的機能の観察を行い,せん妄の発症と関連因子を判断し,安全対策の実施,機能的な日常生活の維持,薬物療法に関する調整,非薬物療法のケア,治療的環境の調整を行っていた。 5.3.の病院における事例研究会の学習活動分析から,(1)システム改善と医師・専門ケアチームとの連携,(2)対象者の主観的世界の理解と患者中心思考への変換,(3)身体アセスメントの技術向上と安楽を重視したケア,(4)せん妄発症に対する予測能力の向上,(5)(1)~(4)から得られた看護師のケア困難感の緩和が,特徴として挙げられた。
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