研究概要 |
本研究の目的は,VOD(ビデオ・オン・デマンド)システムにおいて,高い配信性能を持つストリーミング配信システムを実現する技術を確立することであった.ストリーミング配信では大容量のビデオコンテンツを扱うため,配信性能の向上にはVODサーバのI/O削減が重要となる.本研究では,主に以下の3つのアプローチに基づいてVODサーバのI/O削減を実現した. まず第1に,P2P(Peer-to-Peer)の技術を応用してクライアントのメモリをキャッシュとして活用する手法を開発した.P2Pとサーバを併用したhybrid型のモデルに基づき,再生開始時刻が近いクライアント間でP2Pの技術により配信することにより,サーバのディスクI/O及びネットワークI/Oを削減する効果が得られた. 第2に,再生開始時刻が異なる複数のクライアントに対して1つのマルチキャストセッションで配信する手法を開発した.本方式では,後続のクライアントを約1.3倍速の早送り再生して先行するクライアントに追いつかせ,セッションを1つに統合するadaptive piggybackingと呼ばれている手法を用いた.これによりサーバのネットワークI/Oを半減する効果が得られた. 第3に,早送り再生やネットワーク混雑時における品質確保を目的として、動画圧縮フォーマットのMPEGを分析して、データ量が限られている場合に可能な限り映像品質を落とさずに再生する手法に関する研究をおこなった。フレーム間差分の取り方(I, P or B)やピクチャに含まれるMV(Motion Vector)の性質によって,ピクチャの欠落時に映像品質の劣化の仕方が異なる点に着目し,欠落したときの映像に対する影響が少ないピクチャの選別方法を考案し、目視により効果を確認した。 以上の成果を論文にまとめ,国内の会議で発表を行った.
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