研究概要 |
単一磁束量子(SFQ)回路では,超伝導閉路内に生じる周回電流の方向により右回りと左回りの磁束量子が存在し,各々を正あるいは負の磁束量子とし,これらの生成消滅を利用することにより2しきい値型論理回路を構成できる. 従来のSFQ回路においては,SFQの有無を論理1と論理0に対応させていた.しかし,SFQ回路において,周回電流が時計回りと反時計回りのSFQがあり,これら2種類のSFQを用いることにより2しきい値を持つSFQ回路ができる. しきい値論理では,しきい値が増えると1つの素子で実現できる論理関数が増える.このため,2しきい値を用いた構成法を実現できれば,回路構成に必要な素子数を低減できると考える. 本研究では磁気結合型と電流注入型の構成をそれぞれ検討した.磁気結合型の構成では,入力の方向を変えることでSFQの周回電流の方向を時計回りと反時計回りにできる.これにより,2しきい値を用いた回路が構成できる. 2しきい値を用いることにより,1つの基本回路ですべての2入力論理関数を構成することを確認した. 電流注入型の構成では,入力の接続位置を変えることでSFQの周回電流の方向を時計回りと反時計回りにできる.これにより,2しきい値を用いた回路が構成できる. 2しきい値を用いることにより,1つの基本回路で7種類の2入力論理関数を構成することを確認した.残る3種類の2入力論理関数は否定回路を付加することで構成できることを確認した. 今後の課題は,電流注入型の構成を改善することと,3入力論理関数の構成法を検討することである.
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