研究概要 |
本研究の主題であるインターネット上の情報の信頼性評価ば,近年ますます重要性を増してきた.コンテンツの信懸性にとどまらず,情報の流通経路の法的な正当性,倫理的問題など,本研究開始当初から着目してきた事柄が現実の深刻な問題として広がっている.一方,本研究期間中に,Web2.0とよばれる情報や知識をWeb上で共有するといった概念的枠組みがさまざまな方法で具現化されて,信頼を前提としたコミュニティが次々に形成される様を目の当たりにし,ますます本課題の重要性を認識するに至った. こうした背景の中,初年度2004年は,京都大学大学院情報学研究科の石田亨教授に研究指導をお願いし,セマンティックWebの枠組みに基づいた情報のタグ付けやエージェントによる自律的な情報フィルタリングに関する研究を行った. 2005年度からは,研究代表者の千葉大学への移動に伴って,単独で本研究を継続するにあたり,実証実験を最終目標とするのではなく,Webを抽象化されたネットワーク構造として捉えることによって,構造的な観点から情報を共有しうるコミュニティの抽出アルゴリズム,および,その抽出精度を数理的に評価するための規範の構築を目指した.すなわち,Web全般の信頼性を評価する方法論ではなく,ボトムアップな創発コミュニティ単位における信頼の芽生えと維持を促す機構をモデル化し,その有効性を示した. 本方法は,「情報を共有し合うコミュニティ内で信頼を維持することがWeb全体への信頼へと繋がる.」という前提の下で,評価のモジュラリティが期待される一方,正しくモジュラー化されているか否かも評価する上で重要である・そこで,2006年度は,精度の高いコミュニティの抽出法,および,Webの特徴を備えたネットワーク生成モデルを提案し,擬似的なWeb上におけるコミュニティ抽出性能や,そのコミュニティで保証される信頼性に関する評価規範を示した.
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