研究概要 |
側頭葉の情報表現の知見を説明するために,自己組織化マップを形成する神経回路モデルにもとづき,アルゴリズムを提案した.従来の単峰性の局在発火をスパースな(まばらな)局在発火に置き換え,リング上の位置はスパースな局在発火の重心で表されるものとした.リング上の位置が少し変わると,それに従いスパースな局在発火の重心も少し変化するようになり,リング上での遠近関係は,スパースな局在発火の重心の位置にエンコードされていた.次に二つのリングのパターン分離について報告する.異なったリング上にあり同じ位置を持つ二点を考える.二つのリングの位置がそれ程離れていない場合は,この二点に対するスパースな局在発火の発火パターンがほとんど違わないとしよう.この時,神経場上には二つのリングの差は表現されていない.二つのリングの距離が離れている場合,同様に二つの点に対するスパースな局在発火の重心位置は変わらないとする.ここで二つのリングの距離が離れている場合,スパースな局在発火の重心位置は変わらないが,局在興奮内の発火パターンが著しく異なるとしよう.この場合も,スパースな局在興奮の重心位置はリング上の位置θを表現しており,局在興奮内の発火パターンが,二つのリングの情報を表現している.このような情報表現が,リング間の距離が大きいときに獲得されることがわかった.この現象はリング間距離による相転移現象と考えることができる. このメカニズムを説明するためにメキシカンハット型とスピングラス型の両方の性質を持つモデルをレプリカ法で解析した.このモデルは常磁性相,強磁性相,スピングラス相,局在興奮相の四つの相を持つことがわかった.さらにスピングラス型の相互作用が,局在興奮のドリフトを抑制することを示した.さらに相互作用が学習によって変化する状況をパーシャルアニーリング法で解析した.
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