研究概要 |
従来,関節自由度の縮退は,手先の運動自由度が減少する,逆運動学解が不定になるなどの問題から回避すべき関節状態として取り扱われてきた.しかし,多数の自由度を持つロボットマニピュレータでは,関節構成によっては手先自由度の減少が発生しない可能性がある.また,縮退した関節の一部は,理論上は無限の負荷に耐えられるため,手先に加わる外力に対する負荷トルクが発生する関節を選択することが可能になると考えられる.そこで,本研究では,ヒューマノイドロボットに代表されるような多数の自由度を持つロボットマニピュレータを対象に,関節自由度の縮退を用いた新しい作業方法の提案を行った. まず,外力に対する関節の選択的利用に有効な関節縮退状態の分類と,その力学的特徴の解析を行った.また,人間の作業で良くあるような,関節縮退状態での不安定性について解析を行い,関節に加わる外力により関節の縮退状態を壊される状況の解析を行った.その結果,トルクの発生方法が人間とは異なるロボットの場合には,縮退状態が壊れやすいというごとはないことがわかった.また,手法の有効性の検証のためのロボットマニピュレータの設計開発,および製作を行った,そして,実際に縮退状態での押し作業を行わせ,手先発生力と各関節トルクの関係を計測し,関節の選択的利用が可能であるかどうかの検証を行った.その結果,手先で発生する力と関節トルクの関係は,縮退状態付近では,比較的線形の関係を持つことがわかった.よって,縮退を用いた作業において,途中で縮退状態が壊れたとしても、直ちにロボットの関節負荷トルクが大きく変動したりすることはない事がわかった.
|