研究概要 |
1.網膜視神経(網膜神経節細胞)は網膜上で一様に分布していない.この非一様性を模倣し,動く物体を撮影した画面上に微小なGaborレティクルを分散配置して物体の接近・離遠および並進・回転などの運動パラメタを推定する手法を開発した. 2.実物体の追尾実験を行った結果,追尾対象の表面テキスチャの影響を受けて速度推定精度が低下する傾向があった.この影響を低減させるためにレティクルの数を増やすと計算量が増大して実時間性能が低下することがわかった. 3.本研究の申請時には専用の画像処理装置の利用を計画していたが,ラドン変換により画像の一次元射影(周辺分布)を求めて速度場を推定する方法を新たに開発した.像面の水平・垂直・45度・135度の4方向に画像を射影し,網膜神経節細胞の空間的非一様性を考慮して並進と拡大・縮小の動きを連立して解くことで高速で速度場を推定でき,対象表面のテクスチャの影響も低減できた. 4.動きを拘束する制約条件式に基づき,追尾対象物体を背景画像中から適応的に抽出した.追尾対象の移動に応じてラドン変換区間を移動・拡大縮小させることにより対象の動き推定の精度が向上した. 5.運動推定からカメラ姿勢の制御までに含まれるむだ時間および運動推定時に加わる誤差の影響を避けるため,カルマンフィルタを構成して制御応答の改善をはかった.この結果,初年度で追尾可能だった物体の移動速度に比べ,より高速な動きに対しても安定した追尾性能が獲得でき,追尾精度も向上した. 6.前方を移動する物体の像の位置と大きさを一定に保持する追尾システムが,単眼カメラと市販のPCを用いて実時間フルビデオレートで動作可能となった.本研究の成果は電気学会E部門誌に公表の予定である.
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