研究概要 |
本研究の目的は多次元非線形データの明示性の高い可視化手法の確立にある.アンケートデータなどの多次元データからの抽出知識は例えば製品企画などに役立てることができる.しかし,アンケートデータは多変数・少数であり,統計的に有意な結果を見つけられないことがある.このようなデータを様々な角度から明示性高く可視化できれば,知識抽出の支援ができると期待される.本研究では主に二つの成果を得た. 1.可視化結果の明示性基準を定義し,その基準を利用したクラスタリング法と低次元化法を開発した.本手法は,多次元データのクラスタリング・低次元化に,可視化結果の明示性を基準にするという独創的な視点に立ち,可視空間において分離性の高いクラスタを得ることができる.ベンチマーク問題のアヤメデータおよびワインデータに適用し,意味の明確なクラスタを見いだせることを示した. 2.感性データの回答傾向に基づいたクラスタリング法と可視化法を開発した. 回答傾向に基づいたクラスタリング法はアンケート対象間の距離関係の類似性を基準とした独創的なクラスタリング法である.本手法は,直交回転法(OPA : Orthogonal Procrustes Analysis)を適用することで,被験者ごとの質問の捉え方のずれに依存することなく,対象に対する評価の遠近が類似する被験者群のクラスタを得ることができる. 回答傾向に基づいた可視化法は,二人の被験者の評点の相関値からアンケートに用いた質問間の距離を定義し,この非対称な距離関係を可視化する独創的な多次元尺度構成法である.本手法により,被験者間で同じ質問が異なる意味となる場合,異なる質問が同じ意味となる場合など,試験者ごとの質問の捉え方の詳細を分析することが可能となる. さらに,異なるクラスタに所属する被験者同士の評点の相関値から質問間の距離を定義し,クラスタ間での質問の捉え方の差異を可視化する手法を開発した.これによりクラスタリングにより得られた各クラスタの特徴の解析に新たな視点を提供することができた.
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