研究概要 |
「多変量極値データの統計モデルの構築とその推測」について次のような研究を行なった. 今までに提案されている多変量極値データ解析法,多変量極値分布族の性質とその推測法について調べた.一般に多変量極値データ解析では,まず最初に各1次元極値データに一般極値分布を適合させて解析し,それらの各1次元データが標準フレッシェ分布に従うとみなせるよう変換を行なう.次に,各周辺分布を既知(標準フレッシェ分布)として多変量極値分布の従属関数についての推測を行なう. 本研究では気象データの風速や降水量の極値データ解析を行なった.そして,これらのデータに単純に一般極値分布や一般パレート分布を適合しても,多変量極値分布の各1次元周辺分布の精度の良い推測が行えない場合がある事が分かった.そこで,1次元周辺分布の推定精度を上げるための方法として,上位r個を用いる方法とデータのベキ変換を行なう方法について研究し,これらの方法で推定精度が上がることを示した. 多変量極値データ解析では「多変量極値の従属性」は極値事象に関する推測精度を考えるとき重用である.そこで多変量極値分布の従属性について調べ独立性に関する検定等について研究した.Heffernan and Tawn(2004)により提案された新しいタイプの多変量極値データ解析法の応用可能性について検討した.多変量極値分布の性質を調べ各変量間の従属性のorderを定義し,この従属性のorderの性質を多変量極値分布のスペクトル測度と指数測度により特徴づけた.得られた結果のリスク理論への応用を調べた.また,極値データ解析法についてまとめた.
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