研究概要 |
人工衛星で観測される磁気圏プラズマの速度分布は,3次元正規分布(Maxwell分布)でその状態を表現できる.技術革新により精密な速度分布を高時間分解能で測定でき,熱平衡状態に緩和していない複数のプラズマ分布が観測されるようになってきた.地球物理学の分野では,2成分以上が部分的に重なる複雑な分布の形状を分離することは困難な問題で,数多くの観測例を扱うに至っては,より一層深刻な問題となっていた.このデータは日々刻々とGeotail衛星から送信されてきており,これらの問題解決と実用的なソフトウェアが要請されている. 本研究は,時空間データであるプラズマ粒子速度データを統合的に分析することが目的で,これまでの分析で不自然であった成分分布の時間的「動き」の物理的解釈をより明確にすることである.データ解析では「モデル構築」と「データの正則化」に関して様々な問題が存在するが,とくに空間内の欠損領域を考慮した欠損混合分布モデルを提案し,パラメタの推定方法や欠損領域で観測されたと思われるデータ数を推定する方法を提案した.これらは「応用統計学」に掲載され,2005年度の優秀論文賞を受賞した. 分析対象のデータは前述の通りの問題点が存在する.複数あるプラズマの塊が,散逸して消失したり,集散して出現したりする現象を記録した系列データセットに対して,これらを時間独立に扱うモデルや,時系列的に扱うモデル,出現・消失に対するモデルの構築が今後の研究課題として残っている.
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