研究概要 |
個体の該当カテゴリーを表す個体×変数のデータ行列を分析して,カテゴリーや個体に付与する最適なスコアを求める多変量解析法に,数量化分析(多重対応分析・数量化法3類)がある.この数量化分析を発展させ,(A)非線形相関や(B)個体の推移トレンドを抽出する解析法を研究開発した.(A),(B)に関する研究はともに,「目的関数=従来の数量化分析の損失関数+wxペナルティ関数」(w>0)を最小にするスコア算出を目指す点で共通する.以下に,(A),(B)の研究成果を記す. (A)については,主成分分析では抽出できない変数間の非線形関係を空間布置内の軌跡で表現するため,量的変数の実現値を名義カテゴリーと見なし,かつ,数量化されたカテゴリーのスコアを結ぶ変数軌跡をスプラインで表現した上で,その非平滑性をペナルティ関数とする方法を考案した.ここで,ペナルティのウェイトwを選定するためには,交差妥当化法(Cross-valiation)を利用する.シミュレーションや実データへの適用の結果,主成分分析や既成の数量化分析に比べて,考案した手法が,非線形関係を的確に抽出することが示された. (B)については,個体の推移頻度をまとめた複数の正方分割表を分析し,カテゴリーを点で表すと同時に,個体の推移のトレンドをベクトルで表す尺度構成法を考案した.この方法では,個体の推移トレンドを表すベクトルと,全個体を通した推移を表すベクトルの二乗誤差をペナルティ関数とする.実データへの適用結果から,考案した方法によって,カテゴリー間関係と同時に,個体の推移を容易に把握できる結果が得られることが示された.さらに,選択カテゴリーが変化するMoverと変化しないStayerを区別できるように,考案手法を拡張した.
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