研究課題
基盤研究(C)
哺乳動物の大脳皮質を構成するニューロンのうち、抑制性のニューロンは発生中の内側基底核原基において発生し移動してくることが知られている。われわれはこれらの細胞が、大脳皮質原基で発生する興奮性のニューロンとは異なり、完全無血清培地においても高い移動能力を持っていることを見つけた。したがって、抑制性ニューロンの移動性は細胞が持つ自律的な性質であると考えられる。本研究ではこの移動性がいつからどのように発生してくるのかを調べた。(1)発生を遡ると、胎生15日の時点で内側基底核原基の細胞は、ニューロンとして分化する以前から大脳皮質原基の細胞とは異なる移動性を獲得していることが明らかになった。(2)細胞の移動は先導突起内の微小管が中心体を介して細胞体を引っ張るためだと考えられる。微小管と中心体の結合状態に関与する、微小管切断酵素カタニンの機能を調べた。カタニンsiRNAを導入して発現抑制されたニューロンでは、軸索の伸長が阻害されていたが、樹状突起の長さは変わらなかった。カタニンによって切り出される短い微小管の供給は、成長円錐の移動性に特に必要であると考えられる。(3)微小管と中心体の結合状態に関与する、微小管マイナス端結合蛋白ニナインについて調べた。大腸菌に発現させたペプチドを用いて抗体を作成し、神経組織における分布を調べたところ、未分化な神経前駆細胞ではニナインが中心体に局在していたが、分化したニューロンではニナインは細胞質に一様に分布していた。ニューロンが分化すると微小管が中心体に繋留されず、細胞内に遊離することが突起の伸張や移動性にかかわっているのではないかと考えられる。
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