研究概要 |
猿での連続磁気刺激の作用機序に関する実験 二層性刺激パルスによる・5Hzの連続磁気刺激(rTMS)を用いて、猿の運動野を刺激して、グルコース代謝への効果をPETにより、経時的に記録した。その結果、刺激直下の大脳皮質と、該当部位とコネクションのある部位において、2週間くらい持続する抑制・興奮の効果が見られた(Hayashi et al.,2004)。この刺激法は臨床的に治療に使用出来るだけの持続があると思われた。 さらに同様な運動野rTMSにより、大脳基底核で.ドーパミンが分泌される事が判明した(Ohnishi et al.,2004)。この結果は、パーキンソン病などの基底核疾患の治療にrTMSが有効である可能性を示唆した。 人で作用機序の関する研究 人でもPETを用いて検討した結果、前頭葉の刺激により腹側線条体が活性化された(Ohnishi et al.,in press)。この事実は、この刺激が精神科疾患に有効である機序を説明するかもしれない。 また、近赤外線による脳図血流測定をして磁気刺激を加える事により、磁気刺激により生じている生体の変化が、従来の生理的機能による脳代謝・血流変化と異なり、特殊な変化であることが証明された(Mochizuki et al.,in press)。この所見は、治療に最も有効な刺激法を考案する時に重要な情報となる。 痛みの治療に関する研究 人工的に誘発した痛みに対して、磁気刺激を加えるとどういう変化をするかを検討した。その結果、痛みに.対してrTMSが治療効果があることが判明した(Tamura et al.,2004a)。ただし、slow pain, rapid painで効果に差があり(Tamura et al.,2004b)、どのような痛みの治療に用いるべきかが、これからの課題と思われた。 二層性パルスと単層性パルスの効果の差異 従来二層性パルスがrTMSでは使用されていた。しかし、単層性パルスのほうが効果の加重が起きやすく、大きな効果を出すだけでなく(Arai et al.,2005)、効果の持続も長い事がわかった。そこで、治療にrTMSを使用するときは、単層性パルスを用いるべきであると結論した。
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