研究課題
基盤研究(C)
齧歯類のバレル皮質は、発達の一時期にシナプス伝達効率を変化させる臨界期をもつが、本実験ではこの時、視床-皮質シナプスにおいて放出確率が発達に伴って変化するか、そうであれば特に臨界期との関連があるか、さらにシナプス後細胞の性質となんらかの対応関係があるのか検討した。実験は視床-皮質間の繊維連絡を維持した体性感覚野の切片標本をマウスより作製して行った。刺激電極を視床に置き、皮質4層細胞からパッチ電極を用いて電圧固定下に細胞内記録を行った。その結果、以下の点が明らかとなった。1)NMDA受容体のOpen Channel BlockerであるMK-801を用いて放出確率を推定した。その結果、高、低2種の放出確率をもつ視床神経終末が発達期を通して4層細胞に終末していた。2)高、低2種の放出確率のうち、低放出確率終末は発達期を通じてその程度を変えないが、高放出確率終末は発達に伴い次第に放出確率を減少させ、臨界期の終了とほぼ同時に成熟動物レベルに達した。3)放出確率の発達に伴う変化を確認するために、Paired-pulse ratio (PPR)を記録した。その結果、NMDA反応はMK-801より得られた結果と一致して臨界期中に放出確率が低下することが確認できた。しかしながら、AMPA反応は、NMDA反応とは逆に、発達につれて放出確率が減少した。NMDA反応とAMPA反応の結果が乖離したことは両者が必ずしも同一シナプス上で起こっているのではない可能性を示唆しており、サイレントシナプスが関わっている可能性が考えられた。4)シナプス後性サイレントシナプスの含有率の推定を試みた。その結果、臨界期中に確かにサイレントシナプスが存在すること、また、NMDA/AMPAのPPR乖離の程度とサイレントシナプスの含有率が相関することがわかった。以上を総合すると、サイレントシナプスにはより選択的に高放出確率終末がシナプスしている可能性が示唆された。
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