研究概要 |
我々は、1)胚性幹(ES)細胞由来神経幹細胞(NSCs)のドパミン(DA)ニューロンへの分化誘導とその分化機構の解明、2)その細胞移植により障害脳機能を再建するための基礎的研究、に取り組み、以下の結果をえた。 1)DA入力の欠如した線条体に発現増加している因子(IL-1β,Il-11,LIF,GDNFの混合物:cytokine mixture)および3.5%低酸素条件により、NSCsからDAニューロンへの分化が促進される2)NSCsの細胞周期をG1/S期に制御することによりp27^<kipl>遺伝子発現の増加を介して神経分化が促進されることを示した。現在、dk5およびTGF-β1とp27^<kipl>遺伝子との関係に注目し解析を行っている。3)pleiotrophin(PTN), IL1-β,3.5%低酸素によるNSCsからのDAニューロンへの分化が、HIF-1αを介する機構により誘導されることを明確に示した。すなわち、再生過程に関与する因子(PTN, cytokine mixture)、発生過程に関与する因子(低酸素条, PTN)に共通なシグナル機構としてHIF-1αが重要な働きを持つことを示した。4)PTNが移植細胞の生着を促進するかどうかの検討を行い、PTNを移植細胞に処置すると移植後に認められる脳内での細胞死を抑制し、結果としてより良い運動機能の改善が得られることを示した。
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