研究概要 |
最終年度として全例の解析を施行した.全症例すべてに認知症を認め,発症年齢も通常のADと比較すれば若年であった.痙性対麻痺が認められない症例もあり,てんかんやパーキンソニズム,失語などを認めることから,cotton wool plaqueを認めるADの臨床症状は多岐にわたることが示唆された. 神経病理学的には,脳は全般に萎縮の傾向が強く,neuritic plaqueの頻度からCERADによる方法で,全例definite ADに分類された.神経原線維変化の分布は,全例でBraak stage V-VIに相当した.したがってNIA-Reagan criteriaによれば,すべての症例がHigh likelihood ADに相当した. Cotton wool plaqueとneuritic plaqueの頻度,分布に関しては,Cotton wool plaqueの頻度は,neuritic plaqueよりも頻度が高く,統計学的にも有意な差を示した症例が多かった.さらに,cotton wool plaqueはneuritic plaqueが存在しない基底核,中脳にまでひろく分布していた. Neuronal migrationの検討:すべての症例に関しては,現在のところ,どの症例にも,白質に神経細胞が存在するが,年齢が一致す多適切なコントロールを準備することが困難な状態である.若年発症のL166P変異では,特に白質神経細胞の数が他の症例より多い傾向にあったが,1例の検討であり,最終的な結論をだすことはできない. 本研究は,新しい神経病理所見を検討したことから,presenilin 1遺伝子変異を伴うADというものが,孤発性のADとは異なり,新しい疾患として検討する必要もあることを提唱した研究であったと考えられる.また,形態学的にcotton wool plaqueに類似した構造が一部のプリオン病にも認められ,今後の課題としたい.(797宇)
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