研究概要 |
食欲抑制系の刺激を伝達する脳内セロトニン系のシグナル伝達に関与する神経ペプチドと胃から分泌され摂食を促進するグレリンとの関係を探索する研究を施行した。 セロトニン受容体刺激薬であるmCPPまたは5-HT放出促進かつ再取り込み阻害薬であるフェンフルラミン(3-5mg/kg)を腹腔内投与すると5-HT2C受容体または5-HT1B受容体を介して摂食を抑制することが知られている。C57BL6Jマウスにおいて24時間絶食後では、飽食時に比べ、視床下部の5-HT2C受容体と5-HT1B受容体の遺伝子発現が増加し、血中活性型グレリン濃度が上昇した。 mCPP,フェンフルラミンの腹腔内投与で24時間絶食により上昇した血中活性型グレリン濃度は低下し、視床下部ではPOMC, CARTの遺伝子発現が有意に増加した。視床下部NPY, AGRP,グレリンの遺伝子発現は前記セロトニン系薬剤投与による変化は認められなかった。これらのことからセロトニン系と血中活性型グレリン濃度間には、負のフィードバック機構が存在することが示唆された(BBRC 341:703-707,2006)。 8週齢のC57BL6J, KK, KKAyマウスでは、摂食量と体重がC57BL6J, KK, KKAyマウスの順で多い。血中デスアシルグレリン濃度は、摂食量と体重に反比例して低くなったが、活性型グレリン濃度は3種のマウス間で差がなかった。血中デスアシルグレリン濃度は、過食と肥満に応じて低下することが示唆された。更に視床下部ではSGK-1遺伝子発現がC57BL6J, KK, KKAyマウスの順に増加していたが、NPY, POMC、グレリンの遺伝子発現は、3種のマウスの摂食、体重に相関しなかった。これらのことより視床下部SGK-1遺伝子発現は摂食、体重と正の相関があることが示唆された(BBRC 344:696-699)。
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