研究概要 |
膀胱上皮細胞には多くの化学物質が産生放出されるだけでなく、化学物質の受容体が存在することがわかり始めている。膀胱上皮細胞からは、その伸展の応じてATPと一酸化窒素が放出し、膀胱平滑筋をそれぞれ収縮・弛緩させる機能が知られている。これに加え、アセチルコリン(ACh)、ノルアドレナリン(NA)そしてプロスタグランジンが産生される。一方、膀胱上皮細胞にはムスカリン受容体、ニコチン受容体、α受容体、β受容体、EP1受容体、TRPV1チャネルの存在が確認されている。本研究では膀胱上皮細胞のα1D受容体の存在し、知覚神経の興奮性を高めていることを明らかとした(Ishihama et al.,J Urology,175,368-374,2006)。また、EP1受容体の存在を確認し、やはり知覚神経の興奮性を高めていることを明らかとした(Ikeda et al.,Biomed Res,27,in press,2006)。さらにEP1受容体ノックアウトマウスでは対照群ではみられる膀胱内へのPGE2灌流による排尿反射の短縮が見られなかった。しかし、カプサイシンや酢酸の灌流では排尿反射の短縮がおきた(Wang et al.,J Physiol Sci,56 suppl.S201)。従ってEP1受容体はTRPV1受容体の機能とは独立している可能性を示した。一連の研究により膀胱上皮細胞から膀胱知覚神経活動を刺激して排尿反射を活性化する機構があることが明らかとなってきた。その際、膀胱上皮細胞が持つ受容体の多くはATPを放出して一次求心性神経終末の活性化を起こすと考えられた(Momota et al.,J Physiol Sci,56 suppl.S201)。今後、上皮細胞から放出されたAChやNAの放出の条件や作用場所についてこれからの検討が必要である。
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