研究概要 |
本研究は頸椎の粘弾性的特性を考慮して,変形速度制御が可能,かつ純粋なトルクを試料に負荷できる試験装置を試作したものである.装置は,二台のACサーボモータ,X軸およびY軸方向の動きに対応したXYステージおよび二台のZステージの動作の組み合わせによって6自由度の動きを実現している.例えば,Y軸回りの回転力を試料に与え時に生じる各軸方向の反力を,X, Y及びZステージを駆動させることで制御している. 試験装置の試作・動作実験に基づく可動部の軽量化等および反力の制御方法の改善を行うと共に,試験装置の有効性を頸椎模型および豚頸椎を用いて実験的に検証した. I.頸椎模型による実験結果: 1)多方向の反力を同時に0とする制御を行った場合,1方向の反力がキャンセルされても,他の方向の反力が大きく出る場合があり,その結果試料に曲げトルク以外の負荷を与えてしまう場合がある.この結果より,1方向のみの反力のキャンセル性能を重視するのでなく、全体としての釣り合いが重要である. II.豚頸椎による実験結果 1)首を前屈させた場合:首を曲げる動作以外の動き(例えば頸椎の軸方向あるいはそれと直角方向の反力)を拘束すると,各反力を0とした場合と比較して曲げトルクが約3倍程度上昇する.この結果は,本装置が頸椎の単純曲げを可能にしていると推定できる. 2)頸椎の軸方向に圧縮荷重を加えた場合:これは,自動車停止時に後ろから衝突された時のシートから突き上げられる状態を想定しており,むち打ち症の解明を目的としている.この実験結果と1)の首の前屈の結果を比較すると,より首を曲げよとする反力が大きくなっている.これは,むち打ち症は単に衝突方向のみに衝撃力が作用しているではなく,衝撃力がシートなどに伝播し,背骨が頸椎を突き上げるないしは頭の重量で圧縮力が働くと同時に首を曲げる衝撃力が作用すると考えるほうが妥当であることを示唆している.
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