研究概要 |
病理組織標本スライドを3次元の対象物として解析することにより,3次元的核密度など鑑別診断に有用な特徴量を標本の厚さに依存せずに算出し,診断を支援するシステムを実現することを目的として研究を行った. 標本の厚さが観察される核密度(2次元的核密度)に与える影響について理論的・実験的に検討した結果,核の直径あるいは標本の厚さが1μm異なると2次元的核密度が10%程度変動することを明らかとした. 実際の標本の厚さを光学顕微鏡を用いて非破壊的に測定する方法について検討し,3次元の画像データからMinimum Intensity Projectionにより2次元画像を得た結果を用いることなどにより,測定する手法を実現した. 標本スライドの3次元データを構築するため,Blind Deconvolutionにより画像のボケを除き物体の3次元データを得る手法について検討し,標本中の核についてボケが大幅に軽減された3次元データを得る手法を実現した. 病理医が通常観察している病理組織画像1枚から3次元的核密度を含む核の3つのパラメータ(3次元的核密度,核の平均半径,半径の分散)を推定する手法を実現した.また,計算時間短縮のため,3つのパラメータを一つずつ順番に推定する手法(順次推定)を新たに考案し,その利点,欠点を明らかにした. 実現した推定手法を利用するためのGUIを実現した.GUIは,肝病理組織標本画像からの核位置の自動抽出,修正,核輪郭の自動抽出,修正,輪郭情報を元にした核のパラメータの自動推定などの機能を持つ.核位置や輪郭の修正はマウスを用いて容易に行えるようになっており,これにより,標本の厚さに依存しない核密度の算出が可能な支援システムが実現された.
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